PAGE [35]
『FLAME VEIN』〜歌詞カード〜
藤原 「歌詞カード可愛いですねみたいのに対しても、すごい怒ってた。歌詞カード気が狂うほど絵を書いたじゃん。落書きみたいのが好きだったってのと、ああいうアートワークが流行ってたから、これやっとかなきゃ評価もらえないべみたいな(笑) だから描いたんだけど。だから自業自得もあったんだけど、その通りになってしまったのが。で、次回作はその反動で全部ワープロ打ちの文字にしたわけだけど。…自分に対する怒りもあったわけ。卑怯な伝え方だなこれって」
直井 「俺はその頃、藤原が何を言ってるのかさっぱり分からんかった。昔から、DMを手作りでするくらいだから、ちゃんと4人の血が通ってるもの以外何の興味もなかったの。だから藤原が『俺が手で書きたい』って言った時は大賛成だったし。描く作業もすごかったし。 字をちっちゃく書いてて、読めねーよあれ!と思って(笑)いちいち挿絵も描いて。修正液を持ってなかったから(笑)失敗したらそこ切り抜いてそこ紙を貼って新たな絵を描いて(笑)」
藤原 「はははは!アナログだなあ」
直井 「そういうもの含め音楽だと思ってたから、ほんとステキって思ってたの。でもそれからちょっとして藤原がどんどん怒ってくの」
藤原 「ていうか自分で招いた事なんだよね。それが凄い悔しかった。ガラスのブルースの歌詞が本当に響いてるのかな、この猫の外観だけで理解されてるんじゃないかって…あの猫はね、ネタばらしすると俺、幼稚園や小学校の頃に公文やってたんだけど、それでいい点数取ると 俺のお母さんが赤ペンで『良くできました』ってあの猫の顔を描いてくれたの。その猫なの、モチーフは。だから俺、あれ出したのは意味があったの。自分が認められた瞬間に書いてもらったものだから。 俺はその猫に唄ってほしかったの。だからすごく自分の中で物語があることだったんだけど、それが曲の首を絞めたんじゃねえかって不安があって。だから自分に対する怒りもあったし。…下北の町を歩いてて声かけてくれるわけじゃん。数あるCDの中から俺らのインディーズCDを選んでくれた奴がさ、顔の露出もまだままならねえ時によくぞ俺を見つけてくれたよって嬉しいんだよ。でもそうなった時に『あの手書きの歌詞カードよかったです』って言われて、すごくムッとしちゃうんだよね(笑) あれはどうしようもない現象だった。ああいうアートワークは二度とやりたくねえなあと、あの当時は思ってた。今はもっと落ち着いて見られるんだけど、あの時はそうでしかなかったし」
「『FLAME VEIN』が出た時ね、俺、すっごい売れると思ってたの。オリコンとか入っちゃうんじゃねーかって思ってたの、本気でだよ(笑)。いいもの作ったって言う自信と、これが売れなくて何が売れるって気持ち。だから『なんで売れなねーのかな?』って思った(笑)。街歩けばみんなワーってなるんじゃないかって思ってたよ。すごい恥ずかしい話だけど(笑)」
増川 「俺もそういうふうに思ってた。でも形になったのは嬉しかったな。お店に見に行って、見つけたら絶対目立つとこに置いてた(笑)」
藤原 「それはやった、俺も」
直井 「俺もやった!」
藤原 「でも、あの頃、ちょっと天狗だったと思うよ、正直な話。CD1枚出した程度でね。チケット買うのに行列が出来てたり、テープやCD買うのに行列が出来てたりすると、ちょっとした余裕も生まれちゃったりして。でもすぐに、『これは危険だ』って思った。音楽やる以外のところで何を救われた気になってんだ俺は、みたいな。たぶん全員そうだよね。で、やっぱ褌締め直さなきゃいけなかった。だから浮ついた気分にクソ食らえって思ったし。そのアートワークのことからも、やっぱ自分の音楽を大事にしたいってのがバンプ・オブ・チキンの意思なんだし、そうあるべきだって思ったし」
直井 「俺、初めは結構、ベース持ってステージに立って客に俺ってものを知らしめる、バンプ・オブ・チキンっていうものを叩きつけるっていう、そこだけだったの。でもやってく中で、俺が考えてなくて藤原がちゃんと細かく考えてることが、伝わってくるの。歌詞カードのことだったりファンに対する姿勢だったりさ。言わなくても伝わってくんの。なんか・・・・・・面白いなあと思う。だから俺は3人から刺激を受けて生きてた。そう思うことの連続だった。で、それは今も同じなんだよね(笑)」

<< top < prev / next >