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バンド結成〜運命〜
藤原 「あれ、中2の10月くらいか。チャマがベースを買ったの」
直井 「なんかねえ、みんなと一緒っつうのがトコトン嫌いだったの。だからみんなギター買うっていう集団的な行動とかもすっごい嫌で」
藤原 「ギターは結構みんな持ってたんだよな。あんまヤル気のねえ奴に限って買ってんだよ。しかもカツアゲした金とかでだよ?」
直井 「すっごい腹立った。で、みんなとかぶんのもヤだったし、やっぱ圧倒的にベースがカッケーって思ってたの。それで1年前からお父さんに頼んで、いろんな手伝いしたりして、で誕生日に19800円で全部ついてるやつ──ストラップとかチューナーとかアンプとかついてるやつを買ってもらって、フェルナンデスの。バンドが出来なくてもベースを持てれば、ずっと家で弾けるし幸せだと思ってたから。ひとりでコツコツ練習して。俺んち居酒屋だからバリバリ音出せるし。そういうことばっかやってた」
藤原 「で、チャマがベース買ったって情報聞いて、じゃあベース揃ったじゃんってことになって。あとはお年玉でドラム買うって言ってた奴が買えば出来るってことになったんだけど、その来たるべき正月に、そいつがギター買っちゃって。それで空中分解になってた時に、ある日、俺と升を繋いでくれた友達から電話かかってきて『お前らって一時期バンドやるって言ってたけど、まだやりたいとか思ってんの?』とか言われて。『やりてえけど、あいつがドラムやるっつってたのにギター買っちゃったしさ』って話したら、『じゃあドラムがあれば出来んの?』とか言われて。『うん、出来んだけどさ』『俺ん家の坂の上に落ちてたよ』『えぇっ!?』っていう。それで全員集合で拾いに行ったんだよな。そうすっと俺ギター持ってたし、チャマベース持ってたし。必然的に升がドラムってなって、升ん家に持ってったんだよね、全員で、バケツリレーみてえな感じで。フルセットあったんだよね、パールのドラムが。あれは……ほんと運命じゃね? ふふふ」
直井 「でまあ、ギター持ってる奴いっぱいいたから、それでバンド出来んじゃんってなって。で、ウチが毎週火曜日が定休日だったから、これで練習するとこもあんじゃんって」
藤原 「ウチなんかは『バンドやりたい』なんて言い出せない感じだったんだけど、チャマん家はみんなすごく理解してくれてて」
直井 「『カッコいいじゃない』って(笑)」 」
藤原 「『お前ら、本気でやるんだったら火曜日休みだからお店使っていいぞ』って言ってくれて。ちっちゃいアンプとか、持ち込ませてもらって。ドラムも升ん家からそっちに持ってきて。それで『バンドやろうぜ』って雑誌とかについてるスコアで曲合わせたりしたよね」
直井 「藤原はエレキ持ってなかったからアコギで。でもね、ほとんどそん時はずーっと、練習しないで遊んでた。なんか話してたよね。まだヒロとかもいなかったし」
藤原 「うん」
直井 「俺が積極的にヴィジュアル系をやりたいって言ってて。なんか俺、アンダーグラウンドな感じ、マイノリティーな感じをすごい好きになる子だったから。そういうのに惹かれてて」
「それがね、たまたまヴィジュアル系だっただけであって(笑)」
直井 「そうそう。だから臼井には、洋楽は入ってこないんだよね。ニルヴァーナとか、そういうのはないの。一切なかったよね」
「なかった(笑)」
直井 「あってもボン・ジョヴィとかミスター・ビッグとかぐらいだし(笑)」
藤原 「あと3年遅ければ、きっとハイスタとかが俺らにとってそういうふうに響いてたよな」
直井 「そしたら俺、メロコアやりてーって言ってたろうし(笑)。だからそこに思想はそんなになかった。ただやりたいっていう。で、中3になって、文化祭があって。そん時の生徒会長がビートルズ狂で。俺らがバンドやってるっていうの聞いて、『俺と一緒に文化祭出ようぜ』って言ってくれたんだよね」

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