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バンド結成〜文化祭〜
藤原 「生徒会長の権限を使って、生徒有志で出し物をしていいっていうシステムを、そのひとが構築したんだよな、臼井西中学校創立から初めて。で、『俺ビートルズやりたいからお前ら一緒にやろうぜ』って言われて。『練習とかしてんの?』『してる、チャマん家でやってる』『じゃあ俺見に行くよ』って言って来てくれて。『お前ら全然クソな!最悪な!』って(笑)」
「すっげー言われたよね。でも言われても全然わかんないの、なにがクソなのか(笑)。『お前らこれで文化祭出るんなら、ほんっと茨の道歩くけど大丈夫?』って言われて、なんかわかんないから『うん、大丈夫、大丈夫』って(笑)」
藤原 「それで出ることにしたんだよな。なんか『エレキの若大将』みたいな感じの生徒会長だった(笑)。上手かったよね」
直井 「だって弾き語りで”イエスタデイ”とか、全校集会で歌ったりしてて」
藤原 「それで生徒会長当選したの。で、そいつはビートロックなんてやりたくないんだよね」
直井 「だから、まあ俺らの意向で、LADIESROOMの”ゲット・ロスト”をね」
藤原 「LADIESROOM最高だったよね(笑)。超グラム・ロックじゃん」
直井 「俺らにとってはもうアンダーグランドの極致だったよね。俺、はっきり言ってその頃、悪夢とか聴いてた。あとルナシーのインディーズ盤とかも」
藤原 「正直俺としては、升とチャマがカッコいいって言ってるものの中の、ある部分は共有出来たけど、ある部分はついていけないところがあった。その退廃的な美学とか。ほんと化粧しなきゃいけないのかな、って思った時もあったし(笑)。あと、そういうバンドのひと達ってさ、絶叫だったりする時あるじゃん。やっぱ俺歌が好きだったから、ちょっと違うなって思ったりして。詞もほら、印象的なものが多いじゃん」
直井 「屍とかね(笑)」
藤原 「今見ればわかるけど、当時は『なんだコレ?』って。血とか肉とか影とか、なんか怖えなと思うくらい(笑)。そん中でもLADIESROOMは俺にはポップに響いたし。何より歌だったし。LADIESROOMは良かったよ、化粧はしてたけどさ。俺らはしなかったけど」
直井 「スポーツ刈りだった(笑)」
藤原 「ニキビのスポーツ刈り(笑)」
直井 「で、文化祭に出ることになって。先生達はもちろん、『そんな音楽なんてダメだ』って」
藤原 「『ガシャガシャうるさいのはダメだ、クラシックを聴きなさい』って」
直井 チ「でも俺らどうしてもやりたいっつって、すっごい頼みまくって。したら『わかった、1回だけオーディションしてやるから』って」
藤原 「すげー嫌味だったよな。だって学校の授業が、たとえば3時に終わるとしたら、『3時半からオーディションを始める、1分でも遅れたら失格』とか言われて。家まで戻ってギターとか持ってこなきゃいけないのにさ。超卑怯じゃん、そんなの」
直井 「だから緻密に計画立てたよね。ウチのお父さんに手伝ってもらって楽器運んだり」
藤原 「友達も、『お前ら頑張ってっから俺ら協力してやるよ』って言ってくれる奴もいたり。そういう女の子にちょっと……」
直井 「萌え?(笑)」
藤原 「萌えっとかなったりして(笑)。ふふってなったりした。まあ別に好きになったりとかはないんだけどね。で、俺なんて片道2キロ近くあるからさ、学校まで。ダッシュで家まで帰って汗だくでギター持って帰ってきて。で、『ドラム着いた?』って言ったら全部着いててさ、ちょっと感動しちゃった。で、3時半とかにはもう音出せるような状態になってて。"ツイスト・アンド・シャウト"と"スタンド・バイ・ミー"と、LADIESROOMの曲を、3曲やったんだよね。1曲目はLADIESROOMの曲で、先生ぽかーんとしてる感じなの。で、2曲目で"スタンド・バイ・ミー"やって、3曲目で"ツイスト・アンド・シャウト"やったんだけど、そこで先生大ウケ、みたいな(笑)」
直井 「『俺も知ってるよ、その曲』みたいな」
藤原 「やっぱ生徒会長あなどれねーなと思った(笑)。このための選曲だったのかと思って。『オヤジ連中さえ引き込んじまえばこっちのもんなんだよ』みたいなこと言ってたから(笑)。で、出場権をゲット出来た」
直井 「大成功だったよね。もう総立ちで、全校生徒。3曲終わって、ウワーッってなってて。幕が下りたらもう、アンコールがあって」
藤原 「やまないんだよね」
直井 「出来る曲がねーんだよ。だからもう一回"ツイスト・アンド・シャウト"(笑)。それしか出来ねーから。それでも客は大ノリで。終わった後、超ヒーロー。『お前らほんっとカッケーな』って」
藤原 「超不良の奴に便所で会っちゃって、なんか『調子こいてんじゃねーよ』とか言われんだろーなーと思ったの。したら『おう、マジカッコ良かったよ、良かったよ』って」
直井 「その一言が一番嬉しかったよね(笑)」
藤原 「あとなんか、不良軍団の中でさ、ブームに乗じてギター買って、やらねーから誰かにあげちゃったとかいう奴もさ、『あいつギター返してくんないかな』とか言ったりしてな(笑)」

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