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高校時代〜DANNY〜
直井 「で、大会出て。リハーサルってもんが何かわかってなかったから、リハーサルで全然違う曲やってんの。"スタンド・バイ・ミー"やってんだよね(笑)」
藤原 「みんな、すっげー黙ってて。こりゃ俺ら、いい演奏したんだな、度肝抜いてやったよって。まあなんてことはない、『なんでこいつらエントリー曲と違う曲やってんだ』って疑問の目だったんだけど(笑)。でやっぱりダメだったんだけど、スタッフのひとに俺らの評判聞いたら、『人気投票結構高かったよ、2番目くらいに高かったよ』って言われて。『じゃあ俺ら千葉で2位なんじゃん、すごくない?』って。だからすごい前向き思考(笑)。みんなで軽井沢にバンド合宿とかに行ったりして。でも演奏してた時間なんてほんのわずか。あと何やってたかっていうと、ほんと飢えと苦しみ(笑)。そういう時期を過ぎてって。その時もうひとりメンバーいたんだけど、そいつは結構とっぽい奴で。合宿行っても、なんかいい出会いがあったらいいなーみたいな」
増川 「逆に今時の奴だったんじゃない?」
直井 「一番普通な奴だった。モテたし」
藤原 「俺らは女の子に声かけるなんて怖くて出来ないよって、妄想で終わるタイプ。そいつは実行するタイプ。で、やっぱソリが合わなくなって。俺と一番仲良かったから、俺は橋渡し的な感じにしてたんだけど、やっぱ俺とふたりになっちゃうことが多くて」
直井 「俺、嫉妬してたもん。そっちに行ってる時の藤くんがあんま好きじゃなかった」
升・増 「(笑)」
藤原 「(笑)『もっとあいつと喋ってやってくんねえ?』みたいなこと言ったりしたよね。で、増川は結構、柔軟にやったりしたんだけど」
直井 「特に俺だ」
藤原 「チャマは練習場所提供してて、親に対する引け目もあるわけで。でもそいつはモテたいだけでやってる。全然別にいいんだけどさ、それもさ。俺らも似たような動機だし。初めから『僕は音楽をやるために生まれてきたんだ』みたいな、そんなんじゃなかったからさ。でもそいつ、いつも練習遅れて来て、遅れてきた後も寝たりとか。たまに音出したかと思えば、すごいチューニング狂ったまま弾いてたり。……まあ今思うと、温度が合わなかっただけなんだよね。で、家出したんだよ、そいつが。その理由が、バンドやりたいって親に言っても認めてくんなくって、『だから俺、ストライキで家出たんだよ』っつう。でもそういうこと言ってても、ギター買うって貯めてたお金で服を買っちゃったりしてたから(笑)。そういうとこで俺らと温度違うなってとこがあった。全然わかるんだけどさ(笑)。で、家出して、迷惑なことに俺ん家のすぐ近くの公園に来ちゃって。俺、結構駆り出されたりして(笑)。毛布とか持ってったり」
増川 「俺はなんか缶詰持ってった」
藤原 「でも可哀想に健康管理がまずかったせいか、湿疹が出来ちゃったりして(笑)。その横でね、ぼけーっと話聞きながら、『だってお前ギター買ってねーじゃん』とか思いながら、"ダニー"を書いたんだ」
直井 「そうなんだよね」
藤原 「そうやって"ダニー"が出来て。あ、この曲いーじゃんって思って。"デザート・カントリー"はやれりゃいいって感じで作った曲だったんだけど、"ダニー"は結構純粋……純粋っつたら嫌だけど、邪念がない感じで。『音楽って楽しいな』とか『こういう感じの曲ってカッコいいな』とか、そういう気持ちだけで書いたのはあれが初めてだった」
直井 「それが、初めて藤原だけで作った曲。だから作詞作曲・藤原基央の始まり」
藤原 「あ、でも、やっぱ作詞ん時は知恵借りた記憶がある(笑)」
直井 「でも知識的なことだけだったよ。ヒデちゃんが『ここの文法はおかしいよ』とか。だからもう詞に関しては、誰も口出してない」
藤原 「あの詞はさ、雑誌かなんかで読んだのかな、わかんないけど、『結構あったことをそのまんま書くひとって多いんだな』って思って。で、俺犬飼ってたことがあったから、その犬の歌書いてみようってとこから始まったの。内容はさ、朝起きて庭に出てみたら犬がいねえと。どこ行ったんかなって探しに行ったら、隣の家でそこの犬とめちゃめちゃ闘ってたっていう(笑)。で、『頑張れ頑張れ』ってひたすら応援するっていう曲だった」
直井 「俺、初めてメッセージがあるっていう気持ちを覚えた。そういう応援してる気持ちとかさ、初めてメッセージをやってるっていう。だからなんか気持ちいいの、演奏してて」
藤原 「まだ英語なんだけどね。でもみんなで合わせた時、すごい喜びがあったよね」
直井 「あったあった」

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