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バンプ・オブ・チキン〜ガラスのブルース優勝〜
直井 「なんかね、俺、好きな女の子がいたんだよね、そん時」
藤原 「いたねえ」
直井 「うん。その子が、『何、今の?』って言ったのに驚いた。今までほんとに、『何やってんのかなこのひと達?』っていう(笑)」
藤原 「そういう目で見てるひと多かった(笑)」
直井 「だからヴォーカルの声がもっと聴きたいとか(笑)、そういう反応だったんだけど。…………『なんかわかんないけど、4人でそうやって音楽やってんのってすごいね』っていう反応が一気に出てきたよね」
藤原 「で、さっそく、命試ししたんだよ。その夏に”ガラスのブルース”で某大会に出たの。で、優勝しちゃったんだ(笑)。ビックリした。その大会はとってもハイ・レヴェルで、クオリティの高いバンドが多かったと思う。大会の名目が『新感覚オーディション』っていう、要はメジャー・デビュー・オーディションって触れ込みだったんだよね。全国大会まで行けば業界人がわっさ来るぞっていう。だから本気の奴がいっぱいいて。でも俺らは『デビューするぞ!』なんて言葉は会話の中に出てこなかった、全然。まあ漠然と、これに勝てば生活してける的なものもあったかもしれないけど、でもとにかく命試し、自分試しみたいな感じで。そういう気持ちでやって1個勝ち上がって、1個勝ち上がったら次もう本選で。天王洲アイルだっけ?デカいとこでやったの。その時……みんなCD聴いてるみたいに上手いって思った(笑)。みんなお洒落で、みんな上手くて」
直井 「ステージ用に衣装変えててビックリしたよ。あと、髪の毛にジェルつけたりしてるの」
藤原 「俺らほんと、着の身着のままで。エフェクターも持ってなかったよね(笑)。やっぱ“ガラスのブルース”はあのアレンジでいくと若干のギターの歪みとか欲しいじゃん。でもないから、クリーントーンのままやるっていう。ちょっとニュー・ウエイヴな感じ(笑)」
直井 「意図せずね。わかんなかったもん」
藤原 「だからすごい上手いひと達がいっぱいいて、こういうひと達が勝ち上がっていくんだろうなーって思ってた。だから結果発表になって全員ステージの上に立たされた時とか、もう俺ら、どうでもいい感じだったよね(笑)」
直井 「期待すらしてなかったよね。遊んでた」
藤原 「なんか面白れー動きをしたりして(笑)」
「すげーバカやってたよね(笑)」
藤原 「でも正直、高校生部門のグランプリぐらい獲れたら嬉しい的なものもあったんだけど、それはパンクをやってるバンドが獲って」
増川 「どんどん決まってったんだよね、いろんな賞がさ。で、あと1個になって」
藤原 「絶対優勝だと思ってたバンドがあって、あのひと達が優勝だろうなって思ってたら、『バンプ・オブ・チキン!』て呼ばれて。俺が覚えてんのは、自分が呼ばれたっていう実感がなくて、チャマが俺の背中を押した(笑)。『俺らだよ!』って、後ろから」
直井 「すげー飛び跳ねたな」
増川 「飛び跳ねて審査員のとこまで行って、ずっと喜んでた」
藤原 「でもさ、グランプリ獲っても何も変わんなかったよね。俺トロフィー楽屋に忘れそうになったんだよ(笑)。そんぐらい意味のないものだった。そんで地元に帰ったら駅前とかに悪ぶった友達とかがいて、『お前ら今日大会だったんだろー、どうだった?』『優勝したよ』とか言って、2〜3日ワッとなって……」

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