PAGE [26]
バンプ・オブ・チキン〜制作会社の出会いその1〜
直井 「あとは普通の生活だよね」
藤原 「そうそう。レコードレーベルとかから電話がかかってくるでもなく、ただ日々淡々と過ぎてって。で、まあそこら辺から自分らでブッキングしてライヴやることを覚えた。千葉で」
直井 「千葉ルックとかルート14」
藤原 「あと千葉アンガって小屋とか、本八幡のサードステージとかでもやらしてもらったり。そういうの繰り返してたら、その優勝した大会を観てくれてた、今も一緒に仕事してる女のひとが『下手だったけどいい歌だった』ってだけで東京からわざわざ観に来てくれて。そん時は英語のオリジナル曲と何曲かの日本語の曲をやってたんだけど。……”くだらない唄”があったかな。”アルエ”はギリギリなかったかも」
直井 「“18years story”っていう英語の曲やってたよね」
藤原 「あと、“ワースト・ライフ”(笑)」
直井 「“トランス・ライフ”ってのもあった(笑)」
藤原 「“モーニング・グロウ”ってのもあったし”サンシャイン”ってのもあった」
直井 「ほんと英語ばっか(笑)」
藤原 「でも”ガラスのブルース”以降は本当に『歌』を作ってて。英詞でも『詞を書いてる』って感覚があった。今よく俺はさ、『曲は俺の子供みてえなもんだ』みたいなことを言うじゃん、昔の曲も今の曲も大差なく愛せるって。そういう意識はもうその頃からあった。そいで、その彼女の感想は、下手くそだけど曲がいいって。あと、4人の姿勢がいいって言ってくれて。とにかく興味を持ってくれて、名刺をくれたんだ。その名刺を増川が食ったの(笑)」
増川 「(笑)すげー失礼な話だよな」
直井 「(高い声で)食べられんじゃねーの?』って言って(笑)」
藤原 「でも俺らも、その食ってる姿を見て『やられた』『先を越された』みてーな(笑)」
直井 「だからズボンを下ろしてみたりして」
藤原 「そうそう、ケツに挟んでみたり。それで『なんなんだこいつらは』とは思ったらしいんだけど(笑)。でも、練習見たいってチャマん家まで来てくれたり、何曲かデモテープあるの?つって。その頃はもう一応曲が出来たらMTRで録るようにしてたからさ。で、そのテープを事務所の社長さんに聴かせてくれて。それで、事務所の社長さんも俺らに興味を持ってくれて、代官山にお呼ばれされて」
「大東京ですよ(笑)」
直井 「もう自慢しまくったもん。千葉から東京に行くっていうのは、俺らにとっては大旅行」
藤原 「イヴェント。遠足。修学旅行」
直井 「4人で写真とか撮りながら行って。で、その社長さんは『可愛いね、可愛いね』ってずっと言ってた。音楽がどうとかじゃなくって、4人の存在のすごさを----」
藤原 「『すっごくいいんだよね、この4人の空気の感じがね。喋ってみても、すごく音楽に対する姿勢もちゃんと持ってるし』って」
直井 「そっから転がりはじめたよね。そのふたりに出会ったのが……」
増川 「デカかった」
藤原 「そのひと達は制作会社としてじゃなくて、単純にひととしての付き合いをずっとしてくれて。だからすぐに契約書出すなんてことは全然なくて。『一緒にやってこう』って告白されたのは、それから2〜3年後の話だから」
直井 「すっごいステキなひとだよ。別に俺らに金を出すとかいう感じでもなくて。『ただ見ていたい』っていう」
藤原 「『守りたい』って言われたの。全然ピンと来なかった。『いろんな誘惑があるからそれから守りたい』とか言われてて----今だったらよくわかるけど。実際守られてたし」
直井 「で、その女のひとから『オールナイトのイヴェントをやるから出ない?』って言われて出たのが、初の東京ライヴ」
藤原 「(下北沢)クラブ251」
直井 「俺らの出番は深夜の2時からとかで、俺らすっげー眠くなっちゃって」
「だから帰りもなかなか臼井に帰りつけなかったんだよね。どんどん寝過ごして(笑)」
藤原 「寝過ごすから引き返すんだけど、また寝過ごして、みたいな(笑)」
直井 「でもね、今考えてもほんとにステキな時間だった。まず初めて4人で東京で、『クラブ』って名前のつくところに出て」
「初めてブラックライト見て、ずっと歯ぁ出してたよな(笑)」
3人 「あはははははは!」
藤原 「『おめーの歯ぁ変だよ』とか言って(笑)」
直井 「帰る時、俺ら始発に乗ったんだよね、上野から。で、誰もいなかったから、ひとり席1個ずつ使って寝そべって寝て。でも起きたら満員なの(笑)。あの朝の光が忘れられない」

< prev / next >