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バンプ・オブ・チキン〜4人でいる意味〜
直井 「で、その時、すげー重要な話があって。藤原と一緒に住んで半年ぐらい経った時に、やっぱり俺はヒロに対して納得いかない部分があって。やっぱあん時みんなで約束したしなーとか思ってて。で、俺は藤原とよく下北に行ったりとかしてて、もう音楽ってもんがほんとに、呼吸するような感じになってきてて。で、その頃バンプ・オブ・チキンは藤くんが司令塔になって引っ張ってたの。会いたくもない友達との飲み会に参加してくれてたり」
藤原 「そういうとこからライヴのお客さんを呼んだりとかしてたからな」
直井 「あとブッキングとか全部やってくれて。それをね一緒に住んで肌で感じて。…二人が高校生やってて俺が刑期(笑)をまっとうしている間にこいつがこんな事やってくれたのかって事を本当に感じて、圧倒されて。それで『あ、こいつは俺らと一緒にやるべきじゃない』って思ったの。『こいつに比べたら俺ら3人なんて遊びだな』って。で藤くんに…超熱いよ。夜中の2時くらいに『藤くん、藤くん』って起こして『にゃ〜に〜?』とか(笑)いってくる藤君に『お前ねひとりでやったほうがいいわ』って、ヒロは大学落ちちゃって覚悟もあれだし、ヒデちゃんはヒデちゃんで大学行っちゃってるし。俺は俺で音楽ってもんがなんだか分かってないしお前はもう音楽ってものを分かってるし、生き方ってもんに対して大人だし。だからひとりでやりなよ。俺らのことはもういいって。…明らかに藤くんが支えてたから。俺らがバイトとかしてる間も、藤くんはバイトとかしてなかったのよ。音楽のことだけやってた。だからもういいからって−超熱いよ、俺。朝まで泣いたもん(笑)」
藤原 「泣いた泣いた(笑)」
直井 「そんとき始めて引き抜かれそうになった事を話してくれて。『一人で音楽をやる意味がないんだ』って、『確かに俺も第一線で出来る自信はある、でもそこには何の輝きも感じられない。俺はお前らと一緒にやりたいんだ』って言われた時俺は号泣した(笑)。朝まで語ったよね。」
藤原 「チャマは今こういう言い方したけど、俺が受け取った感じはもうちょっと違くて。『俺もそうだしあいつらもそうだと思うんだけど、バンドやりてえよ、でもお前の足を引っ張りたくないんだ』って言い方だった。で俺は『そんなこと言われたら俺が寂しいだろう』って話した記憶がある。『仲間外れにするなよ バンプ・オブ・チキンなんだから』って」
直井 「……っていうのがデカかった。俺それを聞いてから、ヒロが浪人したこともヒデちゃんが大学に行ってることも、一気に広い視点で見られるようになった。別に普通なんだって」
藤原 「当時あとね、もう一個状況としてはね、俺のバイト先のひとが、キャバクラの女に熱を上げて、俺らの給料とか全部つぎ込んで蒸発しちゃったっていう事件が起きて。俺3ヶ月分ぐらいの給料がパーになって、その3ヶ月、家賃とか全部チャマが肩代わりしたって事件があった(笑)。あん時はほんと悪かったなって(笑)」
直井 「でも、藤原はそういう付き合いとかもあったから、しょうがないっていうふうに思ってた。…いや、そこまで大人じゃなかった(笑)。愚痴ってた、ヒデちゃんとかに(笑)」
藤原 「俺は俺で素直に謝ることも出来ずに、『だってあいつが蒸発しちゃったからさ』的なことしか言えなくて。でも本音を言えば『ほんとにダメだな俺』みたいな(笑)。そんな矢先、チャマの友人から、チャマが一緒に遊んでる時倒れたって聞いて。話聞いたらなんも食ってねえって。あと過労とかもあっただろうし。で、ちょっと……褌締め直さなきゃ、ひとりで音楽やってんじゃなかったんだって思ったんだよね」

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