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5.『FLAME VEIN』
藤原 「『FLAME VEIN』の前に500枚限定のCD作ったりしたんだよね。“アルエ”と“ナ イフ”と“リトルブレイバー”の3曲が入ってるやつ」
「CDってものになったのはそれがそれが初めてだったから、すごい嬉しかった」
藤原 「うん。で、『FLAME VEIN』か……ええと……あ、冬だった。バズーカスタジオ。中野じゃなかったっけ?」
直井 「ああ思い出した。俺ら藤原がヴォーカル録ってる時ケツ出したりしてた(笑)」
藤原 「レコーディング自体2日間だったよね。3日目でTDだもん。曲は当時あったもので、一番新しかった曲が“ノーヒット・ノーラン”」
直井 「たしかそれはほとんど練習はしてない。……今考えるとすげーなー」
藤原 「プラスチックのケースに入った、出来上がったものを見た時は、ちょっと『おお〜』と思った。『FLAME VEIN』ってタイトルはすげーいいよね。演奏中にそれぞれ血管が出てたの。手とか首とか。 必死だったのかもしんないね。なんかマグマみたいなもんが流れてるって、そういう実感があって。それで『FLAME VEIN』になったんだよ。エモーショナルだったね。……この頃、自分らの音楽活動への希望って、もう全然あったよね。自信だけはずっとあったしね、最初から(笑)」
直井 「世界一だって思ってた」
藤原 「いろんなバンドと対バンとかしてたけど、同じ畑に誰もいねえと思ってたし」
直井 「みんな上手いんだけど、鳥肌が立たない」
藤原 「『歌』をやってんのは俺らだけだったの。俺ら以上に『音楽』っていう気持ちでやってる奴らはいないだろうって。大体が『ロック』だとか『パンク』だとか、先人が作った文化とかを上手に表現してるだけじゃんみたいな。でも俺ら下手だなっていうのはあったけど(笑)。そのジレンマっつーのはあったけど」
直井 「なんかお客さんの反応も別格なの。俺らがステージに立つと、俺らを知らないお客さんでも総立ちに出来た。目が違うっていうのがわかった。明らかにわかった」
藤原 「でも観察してる感じのひともいて、それに対して説教したりとか(笑)。ヤだなって思うんなら出てけばいいし、出ていかねえってことはいいと思って観察し続けてるんだろ。じゃあギブ・アンド・テイクじゃねえか!返してこいよエモーションをよお!みたいな」
直井 「藤原、ギター・ソロん時に、弾かねえでモニターに足引っ掛けて拳上げてたもん(笑)」
藤原 「やっぱさ、ステージで初めて自分と向き合うんだろうな、きっと。ステージ以外の部分でも紛うことなき『俺』で生活しているわけだけれども、やっぱステージは、否が応にも『自分に向ける視線』が高まるわけで。……やっぱそこで値段をつけられる、審査が行われる……生きていていいのかどうかのさ。そこでいい子ちゃんぶってもしょうがない。豹変するわけじゃなくて、ストリップ・ショウだよね。服なんか着てても意味がない。ハートの問題」
直井 「なんで自信があったのかっていうと、何よりも自分達のバンドを好きだった。あのね、俺その頃、自分達の音楽を一番聴いてたかもしんない。あの3曲入りのCDを聴いてた。だって何よりもいいんだもん。一番他のバンドと違うなっていうのは、4人が『バンプ・オブ・チキン』っていう音楽に対して、自身とか責任とかってものを、本能的に持ててたとこだと思う。だから感情しかないし。技術とかまったくなかったから。ほんと弾けないのよ、ベースなんて。弾いてるけど(笑)。弾いてないし、今考えれば。ただ弦を殴ってるだけ」
藤原 「クオリティとしては、それはそれは酷いもんだったと思うよ。だけどお客さんは絶えず来てくれた。で、俺らもそれに甘えないで常に……だから喧嘩売ってるって言っても過言じゃないくらいのライヴだった」

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